父の日でしたね。
昨日、思い立って父親に焼酎を上げました。
七代目姫野。理由は自分が割と好きなのがいい値段で売ってたから(笑)
なにとはなしに、父の日的なSS。
青也と紫苑。
『Nothing』
娘がくれた押し花の栞は、形こそ歪んでいたが、散りばめられた花々のその色彩が綺麗だった。
紫苑は娘が何か作ったときにいつもするように、それを写真に収め、それから読みかけの本に栞を挟んだ。
父の日は母の日よりも影が薄い。
大抵こういう行事で贈り物を考えるのは娘と相場が決まっており、年頃の娘は父親を疎ましがる。
したがって父の日の子持ちは寂しかったりする。
娘もいつか自分のことを疎ましく思うのだろうか。紫苑はそう考えてから柄にもなくげんなりとした顔をした。
いい父親ではないと自覚はしている。
家事は適当だし、仕事に身も入れない。娘との約束を破っては泣かせてしまう。
つまるところ、失格なのだろう。人間としても父親としても。
中庭に面した障子は開け放たれて、涼しい風が畳の上をかけていく。
本が風にめくれそうになるのを置時計で押さえると、紫苑はそのまま畳に寝転がった。
空は綺麗な青色で埋め尽くされ、白い雲が薄く流れていく。
そのまま眠ろうかと目を閉じかけた時、紺色の瞳と目が合った。
「………」
縁側から自分を覗き込む、上下逆さの顔を見て、紫苑は欠伸を一つこぼしてから口を開いた。
「どうしたの?」
「いや、寝てるのかなと思って」
「寝ようとしてただけだよ」
手を伸ばして、甥であり息子である子供の髪に触れた。
黒い髪から少しワックスの匂いがする。
一度手を離すと、紫苑は起き上がって髪を手櫛で掻いた。
「さっき蝣子から栞もらったよ」
「父の日のプレゼント?」
「そう。やっぱり女の子って可愛いよね」
青也は何故か少し困ったような顔をした。
縁側から中に入ると、紫苑の近くに座って、それからまた眉を寄せた。
「………父の日に何かあげたことなくてさ」
「そうだっけ?まぁ俺もあげたことないよ、親父には」
「だってお父さん死んだとき、俺七歳だし。学校で父の日に絵を書いたことくらいだもん。だからどういうものあげるのかなーって思って店に行ったんだ」
「うん」
「ネクタイとか酒とかあったんだけど、どうもわかんなくてさ。だってうちの人間でネクタイつけてるの見たことないし」
「そうだね」
青也は言葉を切ると、ため息をついた。
「わかんなくなっちゃったから買わなかった」
「ふぅん」
「ふぅんって……何かないのかよ」
「え、何が?」
紫苑がキョトンとして問い返すと、青也は呆れた顔になって、そして少し怒った口調で呻いた。
「………もういい」
「え?」
「もういい、帰る」
「何しに来たの?」
「叔父さんなんか嫌い」
青也はそのまま中庭に下りて帰ってしまった。
紫苑は暫くそのまま考えていたが、数分経って、漸くどういうことか気付いた。
「……またやっちゃった」
END
恥ずかしくて父の日のプレゼント買えなかったのを謝ろうとした青也と、何のことだかさっぱりわかってない紫苑の図。
紫苑はあまり思いやりとかないので、青也を傷つけてしまいます。自分が意図せぬうちに。
そして青也は青也でどんどんひねくれていく(笑)
